『風の詩』が第一歩
翠の窓vol.208
『風の詩』が第一歩
翠の窓vol.207「金継ぎでよみがえる」を読んでいただいて、何通かお手紙をいただきました。
金継ぎをした岡伸一さんのポットについてと並んで、お茶うけに銀座「ウエスト」の焼菓子を用意したことに関心を寄せてのお手紙もあり、「ウエスト」の人気が広がっていることが感じられました。
横浜に住んでいた頃は、しばしば高島屋内の売り場に寄り、大好きな焼菓子を求めていましたが、ショーウィンドウの上に置かれている『風の詩』というリーフレットを手に入れるのも楽しみにしていました。『風の詩』は、「ウエスト」が、顧客から散文、随筆などの小品を募集し、リーフレットにして店頭に置いているものでした。
横浜では、仕事がらみの文章はしょっちゅう書いていたものの、随筆などを書くことは少なかったのですが、『風の詩』を知って、初めて応募した文章が、思いがけずすぐに採用されました。リーフレットになって「ウエスト」の店頭に置かれたのは望外の喜びで、日々の暮らしの一片を切りとり文章にしていく楽しさを知りました。その後、2度か3度『風の詩』に掲載していただいたように思います。
思えば、『風の詩』に採用されたこの経験が、Suiをオープンするにあたって、「翠の窓」を書いていこうという発想につながっていったのでした。書きたいときに書くという気まぐれな「翠の窓」も、細々と続いて208号。Suiに来店したら、まずこれを読むというお客様には、気まぐれにお付き合いいただいて本当にありがとうございます。
さて、「ウエスト」の『風の詩』は、今も続いていて、この2月末で3811号(昭和22年のウエスト創業時より続いている)になったそうです。沢山の「ウエスト」のファンが、『風の詩』のファンが、何より「ウエスト」の真摯で実直な思いが支えてきた賜物でしょう。 (弓)
2022・3・7