月見の宴
翠の窓 vol.169
月見の宴
まだ明るさの残る時刻、閉店の準備を始めていて、ふと、鳥海山の裾野に月が昇っているのに気付きました。「中秋の名月」の月の出は、白い月でした。まだ左下方の輪郭は曖昧です。
数日後の満月の夜、Suiで、お客様のグループが月見の宴を催しました。この宴は3~4回目となり、いつも私共も仲間に入れていただく楽しい催しなのですが、今年は思いがけない趣向が凝らされていました。
それぞれの席には、豪勢な松花堂のお弁当の他に、小さな包みが置かれました。主催者のTさんからの思いがけないプレゼントで、なんと包みには、正木春藏さんの「間道文筒」が入っていました。
少し前、TさんがSuiから「間道文筒」をまとめて購入してくださっていたのは、この日の為だったのです。
包みを開けて、みなさん大喜び、小ぶりの円筒型の筒には、正木春藏さん独得の美しい絵付けがされています。
「おいしいお酒は、いい器で飲まねばのう。」と言うTさんが用意してくださった今夜のお酒は「」、間道文筒になみなみついでいただいて、おいしいお弁当といただく獺祭のおいしいこと❢ 美しい器の力も大きいのでしょう。
間道文筒がこんなふうに使われていることを知ったら、正木春藏さんも、さぞ喜んでくれることだろうと、近々訪れる予定の正木さんへの何よりのお土産話にしようと思ったことでした。
あいにく夕方から雨足が強まり、せっかくの満月を愛でることはできませんでしたが、それはさておき、「月より団子」の趣で、それは楽しい宴になりました。
宴の終わりには、皆さんそれぞれ間道文筒を大事に包み、次の機会にはまた持ち寄ることを約束して散会したのです。
(Y)
2016.9.19