02 11月

スーパームーン

                      翠の窓vol.170

スーパームーン

 

 閉店時間間際の5時少し前、

「(店を)1時間も探してやっと来られました。」

と、若いお嬢さんが二人、店に入ってきました。店内には既に灯りが入り、鳥海山が遠く薄墨色のシルエットに浮かぶ時間です。

 今夜、68年ぶりの距離に近づいたという満月の出を楽しみに待ち構えていたところへ

来られたお客様二人。

 注文の飲み物をお出しして間もなく、

「今日は、満月が上がるので、灯りを消しましょ   

う。」

と言うと、思いがけないことだったらしい様子です。

 5時を少し回ると、鳥海山の右の裾野のひとところが薄ぼんやりと明るくなり始め、そこから月が上がるのだとわかるようになりました。少しずつ少しずつ明るさが増してきて、5時5分、ひときわ明るく月の上端が光って見え、静かな天体ショーが始まりました。すぐに、これは大きい月だぞと思わせるふくらみを見せ始め、

「すごい、すごい❢」「きれいねぇ」「明るいねぇ」とお客様共々口々に感嘆の声をあげている間に間に、まあるい大きなスーパームーンが裾野の稜線を離れて、ぽっかり浮かび上がりました。

 今日は朝から雲ひとつなく、満月の出を観るには好条件となっていました。4時過ぎに、ひつじ雲のような薄い雲が広がりましたが、月が出る山の稜線付近には雲はありません。

 見えない糸につられるように昇っていく満月、お客様には思いがけない天体ショーに大満足されたようです。

 聞けば、お一人は間もなく結婚のためロンドンに移り住むのだそうで、日本での忘れがたい思い出の一つにしていただけることでしょう。

 次に、これ程のスーパームーンを見られるのは22年後とか。さて、その満月を、私はどこかで観ることができるのか・・・?というのはさておき、これから数日は、夜毎の月明かりを楽しみたいと思います。   (Y)

2016.11.14