30 1月

金継ぎでよみがえる

翠の窓vol.207

    金継ぎでよみがえる

昨年、金継ぎを依頼していたポットが、手

元に戻ってきました。

岡伸一さんの白磁のポットです。岡伸一

さんを知ったのは、もう20年もこと。少し前の

青味を帯びた独特の色合い、エッジの利い

たシャープなデザインが気に入って、形のち

がうポットをもう1客、片口の中鉢、小皿と買

い求め、その後も増やしていくのを楽しみにし

ていました。

ところが、Suiをオープンするにあたり、店にも置かせてもらおうと心づもりしていた矢先、残念な

ことに、体調をくずし作陶をやめたと知りました。

もう二度と手に入れることができないということもあり、大事に扱っていたつもりが、洗った後何かの

はずみで注ぎ口の先を欠いてしまっていたのでした。悔やんでも後の祭り・・・ が、しばらくして、運よ

く金継ぎをしてくれる方を紹介していただくことができ、仕上がりを待ちわびていたというわけです。

欠けた注ぎ口は、ぴったりと継がれ、光沢のある金で装飾して、とても丁寧にきれいに仕上

がっていました。欠いたことを悔やんでいた気持ちが、すうっと解かれていくようでした。

さて、今日のお茶の時間

には、金継ぎでよみがえった

お気に入りのポットに、いつも

のおいしい煎茶を用意して、

湯飲みは、これもこの頃お気

に入りの正木春蔵さんの

牡丹文筒を、塗りのお盆に

セットしてみました。お茶受け

のお菓子は、銀座ウエストの

焼き菓子ヴィクトリアで、しみ

じみおいしい時間を過ごすこ

とができました。

金継ぎという日本の素晴ら

しい美意識がもたらした技術、

これからもちょくちょくお世話に

なることがありそうです。 (弓)

2022・1・10