26 4月

翠の窓vol.65 : 今日から3年目

 

Suiは、昨日で丁度2周年を迎えました。

ここからの景色を喜んで見ていただけるだろうとの思いと、口コミを頼みとする2年間でしたが、おかげさまで、延べ9000名に近いお客様に来店していただきました。私たちの願いどおり、この場所を気に入っていただいたお客様には、「今度友だちを連れてきますね」という方と、「ここは誰にも教えたくないね」という方がいて、どちらも大変嬉しく励まされてきました。本当にありがとうございました。

今年も、ささやかな記念品として木のストラップ(のような物)に、2本線を入れて、昨日からお客様にお渡ししています。

昨日は、

「えっ、2周年! 私たち去年1周年のときもちょうど来てたのよ。」

というお客様がいて、お互いにびっくりしました。

先日、たまたま立ち寄った酒田の郵便局で、家人がSuiと印刷した郵便物を窓口に差し出したところ、受け取った局員の方に、

「gallery and tearoomSuiと刻印のある木のストラップを付けた鍵を窓口に忘れた方がいて、交番に届けてあるんですよ。」

と言われたそうです。大切な鍵に1本線の入った1周年のときの記念品を付けて使ってくださっている方がいらしたことに、感激してしまいました。

1月の大雪、3月の震災と、思いがけない自然の動きにはなす術をもちませんが、日差しがようやく明るい春のものとなって、希望を持ちたい気持ちが沸き起こってくるようです。

ギャラリー&ティールームSuiが、ささやかではありますが、憩いと癒しの空間として皆様をお迎えできるようにとの願いをもって、3年目をスタートいたします。 (Y)

2011.4.26

21 4月

翠の窓vol.64 : 工芸作家たちへの支援を

 

震災直後から東北太平洋側の悲惨な状況が伝えられる中、栃木県益子のハービー・ヤングさんのブログで、工房が大きな被害を被っていることを知りました。ハービーさんの器は、Suiのオープン当初から置かせていただいて、特にモーニングカップは人気商品となっています。

ハービー・ヤングさんの作品

ハービー・ヤングさんの作品

益子の小高い丘の広い敷地に建つ工房の焼き窯のレンガが崩れ、焼く寸前までに仕上がっていた多くの成形品が砕け散っていました。工房の2階には、出来上がった作品を展示している部屋がありますが、そこにあった多くの作品もことごとく床に散乱して壊れている様子がわかりました。その上、工房の隣に建つ住まいの土台となっていた石組みも一部崩れてしまったので、居住することができなくなってしまったということです。

同じくSuiの中心作品となっている茨城県水戸に築窯している坂場圭十さんの所では、窯は無事だったそうですが、多くの作品が壊れてしまったと聞きました。

益子・笠間など北関東の多くの工芸の担い手が被災している状況が分かってきた中で、私たちギャラリーのできることとして、作家を支援する企画が立ち上がっています。幸いに難を逃れた作品やすぐにも完成するところまできている作品を、多くのお客様に見ていただく巡回展です。ギャラリーSuiも、この企画に参加させていただくことにしています。

『手仕事を繋ぐ 東日本被災工芸作家支援企画』として、益子や仙台、那須などの10名程の工芸作家の作品を展示即売いたします。陶磁器、木工、金工など、魅力ある作品の展示となります。

この時期になると探し出す「種まき爺さんの雪形」 

この時期になると探し出す「種まき爺さんの雪形」

Suiでは、7月上旬開催の予定です。追って詳細をご案内いたします。(Y)

2011.4.21

06 4月

翠の窓vol.63 : 山里の春は

 

久し振りのまぶしい朝日に誘われて、散歩に出ました。これまた久し振りに、朝の雲一つない、今日一日の晴天が約束されているようです。

まぶしい朝日と裏腹に頬に当たる風は思いのほか冷たく、気がつけば畦の斜面が真っ白に霜でおおわれ、田の水に氷が張っているところもあります。

にもかかわらず、田の中から「ピチピチピチピチ・・・」とにぎやかな鳴き声があちこちに聞こえてきます。ヒバリでしょうか。

遠くに「クワッ クワッ クワッ・・・」と聞こえてくるのは、白鳥の鳴き声です。北帰行だなと声のする方に目を凝らしてみますが姿は見えず、鳴き声だけが北の方へ移動していきます。一時間ほど歩いている途中に、7~8組の編隊の声を聞きましたが、薄水色の空を背景に飛んでいるようで、どんなに目を凝らしても姿をとらえられませんでした。

北帰行が見られる頃になると、Suiの目の前の田にも白鳥が餌をついばみにやってきます。数日前には、百羽を超える白鳥が道路を挟んで両側の田んぼに降り立ち、終日餌をついばんでいました。ここに住んで5年になりますが、この場所にこんなにたくさんの白鳥が降り立ったのを見るのは初めてのことで、一日中飽かずその姿を眺めていました。

雪解けの田圃、真っ白な雪を頂いた鳥海山、まぶしい朝日、小鳥の鳴き声、のんびり餌をついばむ白鳥・・・ 庄内の初春の何とものどかな風物詩です。今年の春は、どなたもが、いつにも増してこの豊かな自然が損なわれることのないことを願っていることと思います。

被災地となった海にも山にも川にも田にも畑にも、美しい自然が広がっていたことでしょう。再びそれらを誇りとし愛して暮らせる地となりますよう、一日も早い復旧を願うばかりです。   (Y)

2011.4.6

25 3月

翠の窓vol.62 : Sui2周年記念企画

 

例年になく雪が多かったこの冬、2月に入るや晴天が続き「春が駆け足でやってきた」(翠の窓vol.60)と喜んだのも束の間、思いもかけない3.11の惨状に、春を愛でる心は凍結してしまう心地がしています。

Suiは、4月に2周年を迎えます。

その日その日を過ごすことに精一杯で2年もやってきたとは思いがたいのですが、数えてみれば8千余名の来店数になり、本当に多くの方に支えて戴いてきたのだと感慨深いものがあります。

ギャラリーは、2周年の企画を第4回『父の書と息子の表装二人展』と決め、表装をしている息子である家人は、冬の間表装制作に取り組んできました。この二人展はSuiでの開催は2回目になりますが、書や掛け軸に興味を示してくださる方が思いの他多く、昨年は何人もの方に「掛け軸の展示はしないのですか」と言っていただきました。

書は全て家人の父である長登東皐(とうこう)の物です。東皐は一昨年『百歳万々歳』の書を残して他界しましたが、生前書き溜めた作品が数多く残されています。今回は、その中から企画展の季節に合わせて春に因む書を中心に選び展示する計画を進めてきました。

四季の中でもとりわけ人々が待ちこがれる春が、今年は想像を絶する厳しさの中に新しい一歩を踏み出さなければならない季節となってしまいました。それぞれの地での芽吹きを祈念しての二人展となります。

(Y)  2011,3,25

※ Sui2周年企画『父の書と息子の表装二人展』

期間 2011.4.1(金) ~ 5.10(火)

14 3月

翠の窓Vol.臨 : 震災

思いもかけない巨大地震の発生、次々に報道される

惨状に胸ふさがれます。

被災された皆様には、おかけする言葉が見つかりま

せん。ただただ心からお見舞い申し上げます。

Suiには、仙台からと告げてきてくださった方が何人

かいらっしゃいます。どうぞご無事でと祈るばかりです。

鳥海山は、今日も泰然自若として美しい姿を見せて

くれています。

被災地となった町にも村にも、海にも山にも川にも

田にも、美しい自然が広がっていたことでしょう。それ

を誇りとして愛して暮らしていたに違いない方々へ突

きつけられた、あまりにも悲惨な現実を受け止めかね

て目を覆ってしまいます。

一刻も早い救出をお祈りしています。

2011.3.14

09 3月

翠の窓vol.61 : 「九谷青窯」へ

 

定休日の今日、金沢へ行ってきました。

今回の目的は、九谷青窯を訪ねることでした。直接九谷青窯を訪ねて器を仕入れるのは、これで3回目になりました。

秦耀一さんが九谷青窯を開いてはや40年、九谷青窯はその間ずっと日常食器のみを提供してきました。素材は磁器で扱いやすく、白磁・染付・色絵がありますが、どれもシンプルで使い勝手のよいものが揃っています。

現在10名の若い作り手が作陶しているとのことです。その一人一人が、それぞれの感覚でデザインしたものを成形から絵付けまでしています。ここから巣立って独立し人気を得ている陶芸家を数多く輩出しています。Suiに置いている白磁の岡田直人さんも、その一人です。

Suiではオープン当初より九谷青窯の器を扱ってきましたが、1つ、2つとお買い求めいただいて、気が付くといつの間にか完売しているという状態です。ご自分用として、またはご家族の方のためにと、求めやすく使いやすい品として静かな人気があります。

今回は、前回までの仕入れで人気のあったものに加え、新しい形や大きさのものも選んできました。3月下旬より、器のコーナーに展示いたします。いつもの食卓に新しい器が入ることで、春の食卓が新鮮なものになることでしょう。お気に入りの器を見つけに是非お出かけください。  (Y)

2011.3.9

23 2月

翠の窓vol.60 : 春が駆け足でやってきた

 

日本晴れと言いたい天気が3日も続いています。まだ2月というのに。雪降りの天気は全部1月に任せたからとでもいうようです。

今日も冬とは思えない眩しい朝日が昇り、ブルーの空には雲一つ浮かばず、白銀の鳥海山がくっきりと聳えています。例年、一日中雲が浮かばないという日は年に数える位しかないのですが、それがこのところ3日も続いているのは、やはり異常気象ということなのでしょうか。

しかし、Suiにはありがたいお天気で お客様の足がもどってきました。今日も、「すごいねぇ、この景色は・・・」と、何度も口に出して感嘆しているお客様がいらっしゃいました。もう5年もここに住んでいる私達でさえ、この数日の鳥海山の風景には終日見惚れてしまうほどです。

もちろん、雲がかかっていようと、霧がかかっていようと、雨にけぶっていようと、その時々いつも魅力溢れる美しい鳥海山ではありますが、今日のような鳥海山は、一度は見ておいていただきたい姿です。

何はともあれ、春は駆け足でやってきて、あんなに山になっていた雪もどんどん消えてきました。これからは、日々刻々と春の装いに変化していく鳥海山とその山麓の風景から目が離せなくなります。

春の風景を愛でつつ、鳥海山のパワーに包まれ、時には癒され時には元気をもらうひとときをお過ごしください。              「Love letters in the snow」

(Y)

2011.2.23

06 2月

翠の窓vol.59 : カリカリ渡れ

 

朝、目を覚ますとまずは鳥海山を見るのが日々の習いです。今朝は雪を頂いた鳥海山がくっきりと見えていて、今顔を出し始めたばかりの朝日の一条の光を受けていました。

ふと、真っ白な雪原となっている田の上を歩いている家人が目に入りました。「あっ、かた雪なんだ」と気付いて、私も急いで身支度をして外に出ました。

今冬初めてのかた雪です。長靴の下ではザクザクという軽い音、雪原を自在に歩けるというのはちょっとわくわくしてきます。

秋田に暮らしていた小学生の頃、私達はかた雪のことをカリカリと呼んでいましたが、今日は「カリカリだ!」とわかった時は本当にうれしかったものです。そんな日は朝から学校の周りを自在に散歩させてもらえるからです。普段は行ったことがないような遠方まで、所構わずずんずん歩き回り、ちょっとした冒険気分も味わいました。小川の縁に自生しているネコヤナギを採って、振り回して帰ったりしました。こんな歳になるまで、毎冬思い出さないことはない楽しい思い出です。

今朝も、そんな遠い昔のことを思い出しながら歩いていると、何の動物が歩いたのか丸い足跡が点々と続いているのに気づきました。点々の足跡が何本もあり、大きさの違う足跡が交錯していたりもします。何もない雪原のようですが、夜中か夜明け前にか、小動物が人知れずこんなに行き交いしているとは思いませんでした。その様子を見ることができ  「おーい」と声を上げると80羽程の鴨の一群が飛び立ったたらどんなにか愉快なことでしょう。

もっともっとと歩いていましたが、さすがに風はまだ冷たく、フードを被っていても耳がちぎれそうなのに降参して帰ってきました。

かた雪は、積もった雪がだんだん締まって凍り氷の粒になってきてできるとか、春に近付いたということなのですね。節分・立春を経て、春の近いことを日々発見できるうれしい季節になったようです。     (Y)

2011.2.6

26 1月

翠の窓vol.58 : 和菓子屋さんの春

 

降りしきる雪の中、所用で酒田へ車で出かけました。連日の雪で、除雪された雪は歩道に積まれるしかない様子です。

ザクザクと轍がくずれる道路をそろそろ進む車の助手席にいて、ふと、少し奥まった店のガラス戸の張り紙が目に留まりました。

「あっ、うぐいす餅!」

と思わず大きな声を出してしまいました。和菓子屋さんのようです。店の前の両脇はうずたかい雪でおおわれていて、店先の真ん中のガラス戸しか見えません。そこに大きく「うぐいす餅」の張り紙が出ていたのです。

うぐいす餅が大好物の運転中の家人も、この雪道ではさすがに車を停めることができず「うー残念」と素通りです。

連日の雪降りで冬真っ盛りというのに、「そうかぁ、もううぐいす餅の季節か」と気付くと、気持ちがちょっとほっこりするようです。和菓子屋さんは、もう春なのですね。

和菓子屋さんはどんどん遠ざかり、買い損ねたうぐいす餅をどこかで手に入れたいと思い巡らして、駐車の心配のないスーパーの中の和菓子屋さんを覗いてみようと思いつきました。はたして、うぐいす餅は残りの5個がケースに並んでいました。その隣には、なんとさくら餅がこれも5個、さくら餅は私の大好物なのです。ラッキー!というわけで、うぐいす餅とさくら餅を2個ずつ包んでもらいました。

夕食後に甘い物をいただくことはめったにないのですが、今日は夕食後いそいそと緑茶を入れて、うぐいす餅をいただきました。たっぷりの黄な粉の黄緑色は、早春の色。春の先取りです。

間もなく2月、節分・立春と春に向かう季節になると思うと、ちょっと安心するような気分で心も弾んでくるようです。明日はさくら餅をいただこうっと。

(Y)  2011.1.26

16 1月

翠の窓vol.57 : 除雪機活躍 

 

大雪注意報の年末年始は穏やかに過ぎ、ほっとしていたのも束の間、連日の積雪に除雪機が大活躍の毎日です。30~40㎝もの積雪のところでも軽快に雪を飛ばしてくれ、見る見る間にきれいな道が出来ていく様は、見ていて飽きません。

除雪機を運転するのはもっぱら家人の役割ですが、まだまだ初心者なので、石を噛んだ、ネジがはずれた、雪が飛ばない・・・とトラブル続きでしたが、半月も経ってやっとスムーズに運転できるようになったようです。

Suiをオープンする当初から、除雪はどうするかが大きな課題でした。駐車場を確保するには、農道を100mも除雪しなければなりません。一昨年、どうしても除雪機を求める必要がありそうだけど一年目に費用が捻出できるのか・・・と頭を痛めていたところへ、なんと袋地部落のIさんが、除雪機を貸してあげようと申し出てくださったのです。私たちの悩みが聞こえていたのかなあというタイミングで、本当にびっくりしました。

幸い一年目の冬は雪が少なく除雪機の出番がありませんでしたが、二年目となるこの冬はその除雪機を譲り受けて新年早々から大活躍してくれているというわけです。

初めは前かがみになって除雪機を必死に押しているような姿だった家人も、「機械は自分で進んでくれるんだった」とコツをつかんだらしく、今では背筋を伸ばして軽々と運転しているように見えます。除雪機にトラブルがあっても、Iさんがすぐに駆けつけてくれて、やすやすと直してくださるので心配要らずで本当に恵まれています。

Suiは、間もなく2年を経過することになりましたが、これでやっと最低限ではありますが一通りの必要な物がそろって一安心というところです。(Y)

2011.1.16