06 2月

翠の窓vol.59 : カリカリ渡れ

 

朝、目を覚ますとまずは鳥海山を見るのが日々の習いです。今朝は雪を頂いた鳥海山がくっきりと見えていて、今顔を出し始めたばかりの朝日の一条の光を受けていました。

ふと、真っ白な雪原となっている田の上を歩いている家人が目に入りました。「あっ、かた雪なんだ」と気付いて、私も急いで身支度をして外に出ました。

今冬初めてのかた雪です。長靴の下ではザクザクという軽い音、雪原を自在に歩けるというのはちょっとわくわくしてきます。

秋田に暮らしていた小学生の頃、私達はかた雪のことをカリカリと呼んでいましたが、今日は「カリカリだ!」とわかった時は本当にうれしかったものです。そんな日は朝から学校の周りを自在に散歩させてもらえるからです。普段は行ったことがないような遠方まで、所構わずずんずん歩き回り、ちょっとした冒険気分も味わいました。小川の縁に自生しているネコヤナギを採って、振り回して帰ったりしました。こんな歳になるまで、毎冬思い出さないことはない楽しい思い出です。

今朝も、そんな遠い昔のことを思い出しながら歩いていると、何の動物が歩いたのか丸い足跡が点々と続いているのに気づきました。点々の足跡が何本もあり、大きさの違う足跡が交錯していたりもします。何もない雪原のようですが、夜中か夜明け前にか、小動物が人知れずこんなに行き交いしているとは思いませんでした。その様子を見ることができ  「おーい」と声を上げると80羽程の鴨の一群が飛び立ったたらどんなにか愉快なことでしょう。

もっともっとと歩いていましたが、さすがに風はまだ冷たく、フードを被っていても耳がちぎれそうなのに降参して帰ってきました。

かた雪は、積もった雪がだんだん締まって凍り氷の粒になってきてできるとか、春に近付いたということなのですね。節分・立春を経て、春の近いことを日々発見できるうれしい季節になったようです。     (Y)

2011.2.6