26 9月

翠の窓vol.105 : 豊穣のとき

 

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今日は、

「あらっ、稲刈りが終わっちゃったのね。黄金色の様子を見たくて来たのに・・・」

と、しきりに残念がっているお客様がいらっしゃいました。

今年は、9月になっても晴天続きで、目の前の稲穂の波が明るく日に照らされて黄金色に輝く様は、それはそれは見事な眺めでした。

目の前の土門さんの田は、今年もいち早く9月17日に稲刈りをし、私たちもいつまでも見ていたい黄金の波を惜しみつつ、無事に稲刈りにこぎつけた今年の実りの収穫に安堵しました。

8月末に数日我が家に滞在した静岡の友人が、食事の度に、

「ここのお米はおいしいねぇ。」

と感心しきりの様子で言っていましたが、ほぼ1年前に収穫したお米でこの美味しさですから、新米を口にしたらどんなに驚くことでしょう。新米の遊佐米を送る約束をしましたら大喜びをしていました。

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昨年、袋地の農家の方が「今年はとても美味しい米ができた」と言っていましたが、この一年ご飯を炊く度に、その艶と粘りや味に、私たちも「ここのお米はおいしいねぇ。」と言い合ってきました。

さて、今年の新米やいかに!

早苗に始まって、青田となり、黄金の波へと目を楽しませ、さらに生きる糧となる稲の眺めは、毎年のことながら飽きるということはありません。日本人の心に一番しっくりと根づいている原風景なのでしょう。

土門さんをはじめ、目の前の田の変わらぬ姿を維持してくださっている農家の方々に心から感謝する日々です。 (Y)

2012・9・26

04 9月

翠の窓vol.104 : 今年ほど

 

この夏には、美味しい美味しいだだ茶豆をたくさんいただいて、

「今年ほどだだ茶豆を食べたことはないね。」

と、夏の味覚に大満足しました。

この土地の美しさ、澄んだ空気や水にひかれて移り住んだのでしたが、庄内の食材の豊かさに気付いたのは暮らし始めてからのことで、大きなおまけをもらったように思ったものです。

季節を追うごとに美味しいものが出てきて、年中『食』の楽しみを感じていられる暮らしというのは、なんと豊かで幸せなことでしょう。それは、求めれば何でも手に入るという都会の季節感のない豊かさとは全く別物のものです。

季節の美味しいものをたくさんいただいたり、手ごろな値で求められるのもうれしく、

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「今年ほどワラビを食べたことはないね。」

「今年ほどタラノメを食べたことはないね。」

「今年ほどモウソウを食べたことはないね。」

「今年ほどサクランボを食べたことはないね。」

「今年ほど岩牡蠣を食べたことはないね。」

「今年ほどメロンを食べたことはないね。」

・・・・・(書ききれない)

と、年中「今年ほど・・・」と言うのが私たちの口ぐせのようになっています。

この夏いただいただだ茶豆には、〔ピカ一 だだ茶豆の茹で方〕というレシピが付いていて、その通りにしたらきれいな緑色を残して茹で上がりました。土地の方は、こうして豊かな食材を最高の美味しさで食べ続けてきたのでしょう。

さて、次のお楽しみは大好物の刈屋の梨です。甘味十分との情報、きっと

「今年ほど梨を食べたことはないね。」

と大満足することでしょう。

(Y)

2012・9・4

26 8月

翠の窓vol.103 : この世のものとは

 

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「この世のものとは思えないなぁ・・・」 ふと、そんな思いが込み上げてきました。

4時を回ってお客様が途絶えた時間に、ほっと一息一休みしながら、外の景色を眺めていたときのことです。

今日も残暑が厳しく朝から太陽が照りつけていましたが、この時間日はまだ高く、若草色の田んぼ一面を照らしています。色づき始めた稲穂がきらきら輝くようです。薄く煙るような鳥海山、秋を思わせる青空には白い夏雲が高く伸び上がっています。何もかもが耀いて見えます。

「絵に描いたような景色」と言うことがありますが、絵や写真では、この『生きている』眺めを写し取ることは到底できないことでしょう。

時折通る車のほかには動いているものはほとんど無く、静かで、穏やかで、しかし生気に満ち満ちて、何と美しい眺めなのかと見入ってしまいます。

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都会の喧騒やら何やらの世の中と同時進行しているとは信じ難いような、時と場所です。私共にとってここは正に桃源郷なのだと、この場所に巡り合った幸運に感謝しつつ、Suiを訪れる皆様にも、幸せなひと時が過ごせる場所であり続けたいと願っています。                (Y)

2012・8・26

18 8月

翠の窓vol.102 : 一期一器

 

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友人のMさんに手料理をご馳走になり、

「はい、デザート。」

と言って差し出された器を見てびっくりしてしまいました。

美味しそうなゼリーがのっていたのは、白地に薄いブルーの小さな水玉を散らしたデザート皿とソーサー、どちらも縁が波のようにカットされ、小さな丸い穴が施されているのがレースのようです。

なんとなつかしい・・・ この器に初めて出合った40年も前のことが一挙に思い出されました。デパートの「たち吉」に出されていたこのデザート皿は本当に愛らしく一目で気に入って、デパートに行く度に何度手にとって見たことでしょう。若い友人や知人の結婚のお祝いには、迷わずこの器のセットを贈っていました。

なのに何故か、自分のためには買い求められずにいました。飛び抜けて高い値段でもなかったと思いますが、若い自分には贅沢と感じられていたのか、そのうちそのうちと見送っていたのかもしれません。

思い返せば、この器との出会いが私の器好きの原点となったように思われます。こんな風に再会することがあるとは思ってもみませんでした。思いがけなく開かれた私の青春の1ページ、甘酸っぱいゼリーをおいしくいただきました。

みなさまにも、Suiの器のコーナーで「この一器」に出会っていただけることがあったら幸せです。

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(Y)

2012・8・18

01 8月

翠の窓vol.101 : 『フェアリー・アイ』(妖精の瞳)

 

ここ数日「今日が一番暑いみたい。」と言い続けで、日々暑さが更新されているように感じられます。

隅田の花火

隅田の花火

今日から8月、これからが夏本番とすれば、まだまだ暑さが続くということでしょうか。

初夏からずっと目を楽しませてくれた紫陽花も、そろそろ終わりのようです。

この地に住み始めたときは、裏の川辺に小さなブルーの紫陽花が一株あっただけでしたが、その株は今や自重で折れてしまいそうなほどに大きく育ち、その他にも、家人がこつこつと挿し木をして増やしてきた紫陽花が種類もいろいろに育ちました。この時期は惜しげなく切って、店内もいろいろな紫陽花で飾ることができました。

中でも、丸い花びらが三重に重なって咲く紫陽花は、多くのお客様の目を引いていました。あるお客様が『薔薇紫陽花』と言ってくれたので、その名で呼んでいましたが、知人が調べてくれて、これは『フェアリー・アイ』という名で、「フラワーオブザイヤー」なる賞を受けている名花と知り、びっくりしてしまいました。

3年前に鉢植えでいただいた時は、優しいピンク色をしていましたし、小さな薔薇が寄せ集まったような可憐な様子は、フェアリー(妖精)そのものです。地面に植えて育ったものは美しいブルーですが、来年は何とかピンクのものも育てたいと家人が張り切っています。

フェアリーの名に似合わず、茎がしっかりと育ちとても丈夫ですが、日向に咲いていると退色してしまうのが難点です。切花にして室内に置くと色も褪せず、数週間もピンとした状態で咲き続けてくれます。

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『フェアリー・アイ』(妖精の瞳)に会えるなら、7月の暑さは我慢する甲斐があると言えましょう。           (Y)

2012・8・1

10 7月

翠の窓vol.100 : ラベンダーバンドルズ

 

ラベンダーが花盛りです。

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5年ほど前に小さな鉢植えのものを一つ求めてから、家人の得意の

挿し木で増やし丹精してきたものが、今やSuiの庭の夏の代表的な

花に育ってきたのです。

「ラベンダーが花盛りです」とお伝えしたら、すぐに見たいと言って、夕方久し振りに安藤由紀子さんが来てくれました。安藤さんは、昨年Suiでクリスマスリースの展示会を開いてくださったリース工芸家です。

Suiに着くなりラベンダーを見に行った安藤さんが、気が付くと庭石に腰掛けて何やら手を動かしています。ラベンダーバンドルズを作る準備をしてくれていたのでした。

安藤さんと待ち合わせをしていたIさんも加わって、にわかにラベンダーバンドルズ作りの講習会が始まりました。見よう見まねで作ったことがありますが、きちんと教えていただいただくとなるほどというコツがあるものです。

ラベンダーを9本束ねて、細い藍色のリボンを丁寧に市松模様に巻いていくのにすぐ夢中になってしまいました。家人は「21という数がよい気を生む」とかいう自説を喋りつつ、初心者なのに21本に挑戦。1本ずつリボンを通していくのが大変なのに気づいて3本ずつの単位で通していくことにしたら、初めてとは思えないボリュームのあるものができてご満悦です。

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お二人が帰られて、後片付けをしていたら、何故か大きなあくびが続けざまに出てきて止まりません。鼻水まで出てきます、風邪なんかひいていないのに・・・? しばらくして、あぁそうかあ、ラベンダーの香りをずっと吸っていたからなんだと気が付きました。ラベンダーには睡眠効果があるというのはこのことなのね!

家人は、今夜は出来立ての21本使いの大きなラベンダーバンドルズを枕元において寝ようなんて言っています。横になったら数秒で寝息をたてている彼には必要ないのではと思いますけど、心地よい夢が見られるかもしれません。

安藤さんが香りは3年位持続すると教えてくれましたので、タンスに入れたり、車に入れておいたりして、香りを楽しむ暮らしができそうです。    (Y)

2012・7・10

26 6月

翠の窓vol.99 : 美しい暮らしの道具

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つけものポット

キュウリやカブなどの夏野菜が出回ってきたので、しばらく前から気になっていた『つけものポット』を買いました。

キュウリとカブを薄く切って、せん切り生姜を少し加え、塩だけで漬けてみましたら、あらっ!と驚くおいしさになりました。たまたま塩加減がちょうどよかったのかしらと思いつつ、パリパリと箸が進みます。2回目は、キュウリとキャベツをこれも塩のみで漬けたら、やはりこれまでと違うおいしさです。

どうやら、これは新しい『つけものポット』のおかげのようです。おいしい漬物を漬けるのに一番大事なのは重石で、適度な重さが均一にかかることだそうで、その条件を満たすように作られたものとの説明がついていました。

これまでにも幾度か漬物鉢を買っては、使い勝手が良くなくて長続きせず、近頃は、ポリ袋に野菜を入れて軽く揉んだ即席漬けでお茶を濁してきていましたが、このポットに出会ってやっと落ち着きそうです。

ポットと重石は白のストーンウェア、それに透明の耐熱ガラスの蓋がついています。シンプルでとてもお洒落なのが、買おうと決めたきっかけでしたが、それでおいしい漬物ができるのですから大満足です。

冷蔵庫に入れることも考慮された大きさですが、漬物があまり冷たいのは好きではないので、今のところ白いキッチンカウンターの上に置いていますが、色が邪魔をせず、しかも一見漬物鉢とは思えないデザインも気に入っています。

白いポットは、緑のハーブを入れたり、花を生けたりしても素敵です。

美しい暮らし(をしたいと願っている)を支えてくれる美しい道具に出会いました。

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(Y)

2012.6.23

16 6月

翠の窓vol.98 : 今年も蛍の季節に

 

あっ、いるいる! 今年の初ホタルです。

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灯りを落としてお風呂に入っていた家人が、「田んぼの上を飛んでいた」というので、いつものホタル道に出てみました。雨がわずかに降っていて肌寒く、我が家同様の農道とは言え足元は真っ暗、川に寄りすぎないように気をつけて進むと、裏の沼の脇を3つの明かりが揺れています。一年ぶりのホタルの光には、毎年6月15日前後に出会いますが、「今年も間違いなくちゃんと出てきてくれた」とうれしくなります。

更に、Suiの目の前の土門さんの田んぼの脇の小川沿いに進むと、ここにもいるいる!草の間に潜んでいるものが多いのは、寒いからでしょう。それでも、100m位の間に30匹位を数えましたし、向こうの林の方にも小さい明かりが見え、今年は数が多いかもしれないと期待が高まりました。

ここに蛍が生息しているとは知らずに移り住んだ6年前には、発見して大興奮、それ以降は夜な夜な時間を忘れて歩き回りましたが、蛍狩りをしているのは私たち二人だけで、贅沢な時間を過ごしていました。

Suiをオープンしてお客様に紹介するようになって、少しずつ蛍狩りに訪れる方が増えてきました。今年も、楽しみにしていてくださる方からの問い合わせがあったり、今年こそ見に来るからと期待を大きくされている方がいたり、蛍の話題がちょくちょく出る季節です。中には、まだ蛍を見たことがないという若い方がいたりして、びっくりすることもあります。

これから7月の上旬にかけて、日毎に数を増していくことでしょう。お天気がよく蒸し暑い位の方がよく飛ぶようです。時間は8時から9時半位まで。余程条件に恵まれた時だったのでしょう、数百匹の蛍が一斉に飛び回る様を見たことがあります。

畦道は草刈りをして歩きやすくなっていますが、強い光は禁物ですので車の乗り入れはされませんようにお願いします。Suiの駐車場をお使いください。これから7月中旬までは、夜もSuiはセミオープンしていますので、声をおかけください。

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日本の風物詩、蛍のいる夏を是非皆様にご体験いただきたいものです。(Y)

2012・6・16

02 6月

翠の窓vol.97 : 草花を飾る

 

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朝一番の仕事は、Sui店内に飾る草花の準備です。季節が良くなってきたので、庭に咲いているものが活躍してくれるようになりました。

夏用に今年選んだガラスのプレート(水盤)には、ミント系のハーブを3種類とチャイブを数本入れます。チャイブのネギ坊主のような藤色の花がアクセントになります。

思いついて、プレートの中心に小さなガラス皿を入れて、その周りにハーブを差し入れると、リースのように飾れて、これがお客様の目を引いて「こうすればいいのか・・・、真似しよう」との声を幾度も聞いています。

窓辺においてあるアイアンツリーは、今やすっかりSuiの看板になりましたが、その季節の草花を何でも受け止めて、色々なフラワーツリーになっています。Suiではキャンドルスタンドとしてよりも花器として活躍してくれる期間が長くなりました。

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ここ数日は、色とりどりのアリストロメリアが入って華やかです。

正木春蔵さんの「染付鉄絵水面図甕」も、Suiにとって大事な花鉢です。何も入れなくても存在感がありますが、花でも枝物でもざっくりと受入れて素敵な空間を作ってくれます。

直線的な緑が気持ちのいい麦を見つけて入れてみましたら、爽やかな雰囲気になりました。広い口の鉢に直線的なものを入れるには、やはり中にそれを受け止める入れ物を入れると扱いやすくなります。これを見て「帰ったら畑に行って麦を取ってこよう」と帰っていかれたお客様がいました。

間もなく紫陽花の季節、今年もいろいろな種類の紫陽花を店内でも楽しむことができることでしょう。雨の季節を少しでも爽やかにすごしていただける空間にしていきたいと思います。

(Y)

2012.6.2

23 5月

翠の窓vol.96 : お客様一人につき5円を

 

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Suiに入るなり、「わぁ、すごいねぇ。」という感嘆の声や、「ねっ、すごいでしょ。」と自慢してくれる声をあげるお客様の様子を目にする度に、Suiをオープンしてよかったなぁとうれしくなる3年間をすごしてきました。

ここを訪れる誰をも魅了してやまない美しい鳥海山に、オープン当初より、私どもは何か報いることができないものかと考えていました。

ある時、鳥海登山の一拠点でありここから一番近い万助小屋が、酒田の山岳部の高校生によって管理されていると聞きました。そこで、鳥海山を愛する若人たちを応援することが、私どもの願いに通じるのではとの思いで、Suiを訪れてくれたお客様一人につき5円の寄附金を贈ることにしたのです。

Suiの3周年目の今年は、この1年間のお客様5343名分の寄付金をお渡ししました。その際、山岳部の顧問の先生から、

「万助小屋の手前に鈴木小屋というのがあって、そこは、高校生もよく利用する所なのだが、老朽化が進み改修に迫られている。ついては、寄附金をそちらの改修費用にさせてほしいのです。」

との申し出がありました。1年目も2年目も本当にささやかな金額ですので、生徒の皆さんが小屋を掃除した後のジュース代にでもなればとの思いでおりましたが、山岳部では何か有意義に使いたいと全てプールしておいてくださったようで、3年分を鈴木小屋改修費用の一部に役立てていただけることになりました。

これは、オープン以来Suiを支えてきてくださった15000名もの、お客様のご好意と言うこともできます。

遠目に眺めている鳥海山の懐(ふところ)では、酒田の山岳部の高校生を含む多くの人々の奉仕に支えられて、今日も登山を楽しむ人々が行き交っていることでしょう。「鳥海山は生きている」ふと、そんな言葉が浮かんできました。

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(Y)

2012.5.23