10 12月

翠の窓vol.85 : 『イッタラ iittala』いろいろ

 

「いいグラスを使ってますね。」と、帰り際に言ってくださったお客様がいらっしゃいました。

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Suiのティールームの器は何を使おうかと思案中に、北欧クラフトを扱っているお店に行くことがあって、ケーキ皿にイッタラの「オリゴ」のプレートを使おうと即決しました。カップもケーキ皿もシンプルに白にしようと半ば決めていたのに、縁のカラフルなストライプがきれいなので、一目で気に入ってしまったのです。カラーのストライプは縁だけで、ケーキを置く部分は白ですから、シンプルなシフォンケーキを置くには、少し華やかさもあっていいなと思ってのことです。

そのとき、波紋を表現したというタンブラーも無地のものよりおしゃれに感じられて、水用のグラスにと決めたのでした。

130年前にフィンランドのイッタラ村で創業された『イッタラ』は、今やスカンジナビアデザインを代表するブランドとして世界に発信され人気を博しているようです。

Suiオープン間近になってから、経済上「店で使うものは、100円ショップで間に合うものはそうした方がいい」とアドバイスしてくれた方がいて、いろいろな経費に頭を悩ませていたこともあって、そういうものかと気付かされましたが、後の祭り。

しかし、オープンしてみると、ケーキ皿はイッタラと気付いて喜んでくださる方が見受けられたり、前述のようにいいグラスと言ってくださる方がいたりして、結果としてはよい選択だったと言えそうです。

その後、コーヒーをサーブしたらおしゃれかと思って「オリゴ」シリーズのマグカップを揃えてみましたが、熱いものを入れると持ちにくく、今のところ出番がなく待機中。ホットゆずや抹茶ラテのように熱い飲み物には、耐熱ガラスのホットクールを使用しています。

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この冬は、新登場のバームクーヘンをお出しするのに、同じイッタラの「ティーマ」のプレートを用意してみました。全部で7色、カラフルなプレートで美味しいバームクーヘンをお楽しみください。     (Y)

2011.12.10

18 11月

翠の窓vol.84 : 九谷青窯から

九谷青窯から、久し振りに器が入荷しました。11月上旬に九谷青窯に出向き、注文してきた品々です。

Suiオープン当初から展示している九谷青窯の器は、静かな人気があって、入荷して数ヶ月もするうちにほとんど売れて、気が付くと在庫が無いという状況です。白い地に描かれた色絵か染付けのシンプルな絵柄、求めやすい価格が人気の源なのでしょう。

30数年前に秦耀一さんが開いた九谷青窯では、あくまで日常食器に的を絞った器作りが続けられてきました。常時、10名程の若い作り手が、それぞれに個性的な器を作り出してきました。ここから巣立ち独立して活躍している工芸家も多く、Suiに置いている白磁の岡田直人さんもその一人です。

九谷青窯では、これまでに作られた器が大きな棚や床に所狭しと置かれている大きな部屋があって、そこでこれはと思う器を選んでくるのですが、お馴染みになったもの、初めて出会うものなど一つ一つ手にとって眺めるのは、つい時間の経つのを忘れてしまう楽しいひとときです。

先日、「気に入った九谷青窯の長角皿があったのに買わずじまいだったのを残念に思っています」というお手紙をいただきました。すぐに取り寄せられるといいのですが、在庫があるとは限らず、作り手が変っていくこともありますので、出会ったときがチャンスということになります。

今日からの新しい展示で、これがチャンスという出会いがあるでしょうか。普段の食卓に新しい風が入ることで、豊かなおいしい時間がすごせますように。

(Y)

2011.11.18

24 10月

翠の窓vol.83 : 『六夜さん』 月の出を待って

 

10月24日午前2時半を過ぎて、やっと鳥海山の右裾の一所が心なしかほの明るくなってきたように見受けられます。日中は少し雲があったのに、夜になって雲が払われたのでしょう、夜空には満天の星。

Suiをオープンしてから「ロクヤサンを見たことありますか。」と、何人ものお客様に聞かれました。ロクヤサン? いったい何のことやら皆目見当もつかなかったのですが、『六夜さん』が、特別な月の出のことを指していることが分かってきて、月の出が手に取るように見られるこの場所から、ぜひ見てみたいと願っていました。

それがどうやら今夜見られると分かって、『六夜さん』のことを調べて教えてくださったNさんSさんをお誘いしてのお月見となったのです。

風流なお月見に興じようとお二人が用意して来られたススキやお団子をSuiの窓辺に飾って、準備万端。月の出時刻2時33分を待って、外のウッドデッキで、今か今かと鳥海山の裾野に目を凝らしていたというわけです。

2時33分を過ぎてもその気配がなく諦め気分も出始めた頃、裾野の明るさが感じられたので、「あそこからきっと月が昇る」と、息を詰めるようにして見守っていると、ゆっくりと明るさが増してきて、黒い山陰から三日月状の月の先端がホット見えてきました。

「あぁ、出てきた、きれいねぇ。」

と、今夜の月待ち人4人、口々に感嘆の声を上げてしまいました。

見る見る細い月が上がっていきます。横になった細い月がそのままの状態で全容を現しました。傍らに用意した望遠鏡を覗くと、円の下部が細く輝いているのが手にとるように見えます。なんという美しさでしょう。『六夜さん』の月はろうそくを灯したように見えると聞いていたのは、月の先端がホット顔を出したあの瞬間のことだったのでしょうか。

夜を徹して待つかいのあるそれはそれは美しい幻想的な真夜中の一瞬の出来事でした。        (Y)

2011.10.24

04 10月

翠の窓vol.82 : 白い器ですっきりと

 

「食器棚も、ダンシャリしなくちゃねぇ。」

とお客様の声。ダンシャリ?・・・ あぁ『断捨離』か!近頃はやりの。

先頃から、岡田直人さんの白磁の器を熱心に見ているお客様です。

「この白い食器だけを食器棚に入れたら、どんなにすっきりするかしらね。」

と思案顔のお客様に、私は拍手を贈りたい気分です。

特に日常食器は、家族が増えるに従って、家族の暮らしが長くなるに従って、増える一方であれば尚更のことです。

しかし、子どもたちが巣立ち、毎日使う食器も限られてきたら、断捨離のチャンスかもしれません。

何といっても、白い器は器の原点。シンプルで、お料理のどんな色も和洋中いずれの種類も受け止めてくれますし、他のどんな絵柄の器とも喧嘩せず、むしろそれを引き立ててくれます。

器を求め始めたときにまずは白から求めたという方も少なくはないはずです。

先ほどのお客様も、その初心に戻ってみたくなったのかもしれません。まずは、お料理を盛る大皿を一つ、取り皿に中皿を家族分と求められました。

「なんか気分がすっきりして、今日はおかず作りが楽しみになってきたわ。それに断捨離しなくちゃいけないけど、それもやる気になってきたみたい。」

とのこと。

日々の暮らしを楽しく豊かにしてくれる器を、これからもお届けしたいものです。    (Y)

2011.10.4

29 9月

翠の窓vol.81 : コスモス満開

 

台風が去って、やっと秋晴れの爽やかな風を感じることができるようになり、庭のあちこちでコスモスが揺れています。
「はい、これあげる。」
と、Suiの小さなお客様のからコスモスの花を一輪もらいました。
今年はこれまでになく見事に咲きそろっていますので、つい摘んでみたくなる気持ちがよくわかります。
その多くは、Suiオープンの年にお客様のMさんが持ってきてくださった一握りの種から増えてきたものです。その種を植えて、昨年の秋背が高く茎の太いコスモスが育ち、秋の終わりには1升ビン一杯程にも種が採れました。
今年は家人が工夫をして、買い置いてあった土にその種を混ぜ込んで、その土をあちこちに置いていったのです。
まだ紫陽花が満開の頃からコスモスの芽が出始めて、夏の間にぐんぐんと背を伸ばして昨年以上に背が高く茎が太いコスモスが育ちました。
たくさんの花がそろい始めてからは、正木春蔵さんの「染付鉄絵水面図甕」に一抱えも生けるのが毎朝の日課です。最もコスモスらしい少し濃いめのピンク色の花が大半ですが、瓶の薄い水色にピンク色が映えてとても似合い、外で見るより色が一段と冴えるように感じられます。
今年は、どれ位の種が収穫できるでしょうか。昨年の2倍位は育っているようなので、1升瓶2本位は採れることでしょう。来年の今頃は、更に見事なコスモスガーデンかコスモス街道ができているかもしれません。そして、いつか、自由にコスモス狩りをしていただけるようになったら素敵なのですが。気長にお待ちください。        (Y)
2011.9.29

14 9月

翠の窓vol.80 : 開けてびっくり 美香子ワールド

 

大きなダンボールが2個届きました。末宗美香子さんからの作品です。           9月14日は「コスモスの日」だって

テープを剥がすのももどかしく包みを解いて出てきた絵はーーー?! 末宗美香子さん独特の異空間の住人が、一人・二人・三人と出てきました。取り合えず壁に立て掛けて眺めてみます。

う~ん・・・なんとも声になりません。

いったいあなたたちはだれ?

どこから来たの?

なにしてるの?

なんて言ってるの?

後から取り出した小品6点の住人も、女性の体を借りた妖精とでも言いましょうか、

「ワタシハ ワタシ」と、それぞれに個性的な横顔を見せています。

合わせて9点の作品を前に家人も私もしばらくは声も出ず、しばし茫然。そういえば、美香子さんの作品を目の前にするといつもこんなだなぁと思いながら、今回もユニークでおしゃれな美香子ワールドには本当にびっくりさせられています。

明日からのオープンを控え夕方から展示を始めると、大小の作品がぴったりと収まるところに収まり、Suiのギャラリーが、昨日までとはうって変わって、おしゃれな空間になりました。

今日、Suiに足を一歩踏み入れたときの印象はいかがでしたか?

不思議な不思議な美香子ワールドに存分に浸って、しばしの時間、日常を離れた異空間に遊んでみてください。           (Y)

2011.9.14

08 9月

翠の窓vol.79 : 食卓の贅沢クレソンサラダ

 

知り合いの尾形さんが、クレソンを一抱えも持ってきてくれました。

まずはそのまま大きなガラス器に入れてキッチンのカウンターに置いて、豊かな緑色を楽しみます。

夕食には久しぶりに、クレソンサラダをいただけると思うと顔がほころんできます。

数年前に初めてクレソンをどっさりいただいたときに、これをいっぱい食べたいなと思い、ありあわせの大根を千六本にしたところにクレソンを山盛りにして混ぜ、自家製のドレッシングで食べてみたら、その美味しいこと! クレソンをそんなにいっぺんに食べたことはなく、その思いがけない美味しさに、すっかり虜になりました。

なにしろ、それまで都会では、クレソンはせいぜい4・5本を束にしたものが300円位もして、それしか手に入らないので、クレソンを主体に食べるなどという発想は浮かびもしませんでした。

尾形さんは、休耕田に清流を引いてクレソンを栽培しています。

実は、遊佐に初めてクレソンを持ち込んだのが、尾形さんの祖先の長五郎さんという方だったそうですが、当時はクレソンなど食べるものとは思われず、清流にあまりに蔓延るようになって始末に負えず「ちょんごろぐさ」と言われて忌み嫌われたものだったと聞いて、びっくりするやらおかしいやら・・・

今や高級食材と知ったら、当時の村人はどんなに驚くことでしょう。

今朝は思いついて、クレソンとリンゴでジュースを作ってみました。リンゴの甘味に助けられて、独特の苦味も大人の味と思える喉ごしで、これもなかなか。

大根がみずみずしく美味しくなる季節、しばらく『クレソンサラダ』は、我が家の食卓にちょっぴり贅沢で豊かな気分を運んでトマトサラダにもくれることでしょう。     (Y)

2011.9.8

21 8月

翠の窓vol.78 : 正木春蔵さんに会う

陶芸家の正木春蔵さんに会いに、石川県の加賀へ行ってきました。

正木さんの色絵染付けの器に初めて出会ったのは、いつのことだったでしょうか。白地にフリーハンドで描かれた花鳥魚が愛らしく、こういう器があるの!というカルチャーショックとともに一目で気にいってしまいました。

それからは、その時々のお財布と相談しながら一つ二つと買い求め、ある時はお財布事情を忘れてエイヤッと清水の舞台から飛び下りて手に入れた器もあります。

Suiのオープンに際して、器のコーナーに正木さんの作品を置くのが夢ではありましたが、今や幅広い年代に超人気の陶芸家ですので、私どもに器を分けていただくのは無理なことだろうと初めから諦めていました。しかし、夢捨てがたく、思い切ってご連絡をして訪問が実現したのです。

山中温泉の一角に築窯している『山背陶房』は、それが気に入って工房を構えたという欅林の山を背にしてありました。今はお弟子さんをとらず、道子夫人が成形、春蔵さんが絵付けを担当して制作しています。

お二人は、小さなギャラリーを持つだけの初対面の私たちを丁寧に迎え入れてくれ、とても気さくにお話してくださいました。器の雑誌でよく見かける正木さんですが、優しい語り口の方で、あのふわーっとした絵柄の伸びやかな筆致、明るい色使い、ユーモラスな動物たちの表情などが、この穏やかなお人柄から生まれてくるのだと納得しました。

正木さんの器が一つ加わることで、食卓は一気に華やぎ、日々の食卓を美味しく楽しくしてくれることでしょう。

東北地方には正木さんの器を扱っている店は無いようですから、少しずつではありますが、Suiでその魅力的な作品をご紹介していけることをとても嬉しく思います。もう、お手にとって見ていただけましたか?     (Y)

2011.8.21

10 8月

翠の窓vol.77 : 山麓風景

朝の日差しが暑くなる前に、散歩に出ます。

Suiの裏手に出て、田んぼの真ん中の農道を進みます。青田は、7月の強い風の影響で葉先が枯れてきて、大丈夫なのかしらと素人の心配をしましたが、花が咲き穂が出始めて確実に実りの秋へ向かっているのがわかります。

葉先の一つ一つに、畦道の草の一本一本に朝露がこぼれんばかりに丸い玉をつけ、朝日に光ってる様はことの他美しく、毎日のことながら思わず立ち止まってしげしげと見入ってしまいます。

連日、田の持ち主の誰か彼かが畦道や農道の草刈りをし、我が家人も毎朝いそいそと草刈りに精を出してきた(お節介にも自分の土地を遥かに越えての越権行為)成果が出てきたのでしょう。軽トラックが優にすれ違うことができる広い農道が出現しています。

近頃、この農道に親子連れの姿がちょくちょく見られるようになりました。農道の脇の小さな流れに棲む生きものを探しに来ているようです。鳥海山の伏流水を引いている流れですから、とてもきれいで、その底の様子は一目瞭然。小さな魚などを見つけて喜ぶ声がSuiまで届くこともあります。見ていると、子ども達だけでなくお父さんやお母さんも結構夢中になっているのではと思われる節もあります。懐かしい子どもの頃の追体験をしているのかも知れません。

Suiのお客様には、この農道を気に入って、必ず店に入る前や後にずうっとひと歩きされる方も何人か見受けられるようになりました。中には、密かに『○○の小道』とご自分の名前を付けている方もいるとか・・・

鳥海山麓の手つかずの自然と地道な農業がつくり出す景観が、日々静かな感動を呼び覚ますSuiの窓です。        (Y)

2011.8.10

18 7月

翠の窓vol.76 : 夏のドリンク その2

 

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お客様から「加賀棒茶ってなんですか。」とよく聞かれます。

中には、「加賀棒茶は、金沢のお茶で茎茶の焙じ茶で・・・」と言い始めると、「あっ、じゃあコーヒーで。」と、棒茶の注文をパスされてしまう方がいて、(あら残念、棒茶との出会いを逃してしまわれた)と思いますが、いつかは出会っていただきたいなと思います。

知る人ぞ知る加賀棒茶は、焙じ茶と言っても上質の茎を浅く炒る製法で、普通の焙じ茶とは一線を画す香りと色のとてもすっきりした味わいのお茶です。特に、ひとくち口に含んで喉を通るときの馥郁(ふくいく)とした香りが鼻孔に広がる様は、他の焙じ茶では味わえないものではないでしょうか。

Suiでは、温かい棒茶の他に、夏場は『水出し加賀棒茶』をメニューに加えています。愛飲者の方の中には、「加賀棒茶は、水出しの方が断然美味しいと思うので、私は年中水出しを飲んでいますよ。」と言っている方もいらっしゃいます。

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玄米コーヒーの知名度がだんだん上がってきて、

ご注文は必ずこれというお客様も増えてきましたが、

『アイス玄米コーヒー』もお作りしています。玄米が

体に良いとわかっていてもなかなか常食にはできない

という方も多いことでしょう。玄米コーヒーは、玄米を

焙煎して作った玄米100パーセントの飲み物ですから、

飲む玄米とも言えるものです。暑さで体力が落ちがちな

夏場こそ、最適な飲み物かもしれません。夏の麦茶感覚で

飲む『アイス玄米コーヒー』はいかがですか。

さて、Suiの夏のドリンクが勢ぞろいしました。

今日の一杯は何にいたしましょうか。 (Y)

                      2011.7.18