24 10月

翠の窓vol.83 : 『六夜さん』 月の出を待って

 

10月24日午前2時半を過ぎて、やっと鳥海山の右裾の一所が心なしかほの明るくなってきたように見受けられます。日中は少し雲があったのに、夜になって雲が払われたのでしょう、夜空には満天の星。

Suiをオープンしてから「ロクヤサンを見たことありますか。」と、何人ものお客様に聞かれました。ロクヤサン? いったい何のことやら皆目見当もつかなかったのですが、『六夜さん』が、特別な月の出のことを指していることが分かってきて、月の出が手に取るように見られるこの場所から、ぜひ見てみたいと願っていました。

それがどうやら今夜見られると分かって、『六夜さん』のことを調べて教えてくださったNさんSさんをお誘いしてのお月見となったのです。

風流なお月見に興じようとお二人が用意して来られたススキやお団子をSuiの窓辺に飾って、準備万端。月の出時刻2時33分を待って、外のウッドデッキで、今か今かと鳥海山の裾野に目を凝らしていたというわけです。

2時33分を過ぎてもその気配がなく諦め気分も出始めた頃、裾野の明るさが感じられたので、「あそこからきっと月が昇る」と、息を詰めるようにして見守っていると、ゆっくりと明るさが増してきて、黒い山陰から三日月状の月の先端がホット見えてきました。

「あぁ、出てきた、きれいねぇ。」

と、今夜の月待ち人4人、口々に感嘆の声を上げてしまいました。

見る見る細い月が上がっていきます。横になった細い月がそのままの状態で全容を現しました。傍らに用意した望遠鏡を覗くと、円の下部が細く輝いているのが手にとるように見えます。なんという美しさでしょう。『六夜さん』の月はろうそくを灯したように見えると聞いていたのは、月の先端がホット顔を出したあの瞬間のことだったのでしょうか。

夜を徹して待つかいのあるそれはそれは美しい幻想的な真夜中の一瞬の出来事でした。        (Y)

2011.10.24