15 3月

翠の窓vol.115 : 春がきている

 

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風が変わった・・・と感じたのは、幾日前のことだったでしょうか。

厳しい冷たさだけではなく、かすかにふんわりと暖かなものが混じっているように感じられたあの日から、春が足早にやってきたようです。

早朝、家人に起こされて外に出ると、もう身を刺すような冷たさはないけれど、残り雪がかろうじて「かた雪」になっていました。この冬最後の「かた雪」を歩こうというわけです。

鳥海山の頂上付近は薄いグレーの雲がおおいかぶさっていますが、ひと所ぽっかりと雲の切れ間があって、そこに朝日のオレンジ色の光がもれて日の出の近さを感じさせます。オレンジ色の光は、雲の間に間に見る見る空高く広がっていきました。

かた雪の田んぼを横切っていくと、小さな足跡が幾つもどこかを目指して進んでいっている様子が見られました。ウサギかタヌキかイタチのようなものでしょうか、きっと夜のうちにつけられた足跡なのでしょう。そんな小動物の行き交いを見ることができたら、どんなに面白いことかと思います。

田んぼ脇の小川は雪解け水を含んだ澄んだ水を運び、淵の雪はいち早く解けて、枯れ葉色の地面の中に若草色のばっけが幾つも顔を出しています。まだ小さくころんとしたばっけを3つポケットに入れて、確かな春の足取りにほっとする気分でかた雪散歩からもどりました。朝ご飯の味噌汁の仕上げに、ばっけをかるく刻んで落とすと、ぱっと香りが立ちました。

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春の香りです。

いつの間にか鳥海山の雲が遠のいて青空が広がり、まぶしい朝日に鳥海山の雪も田んぼの残雪もきらきら輝いています。今日は、久し振りの晴天になりそうです。  (Y)

2013.3.15

19 2月

翠の窓vol.114 : 「玄米コーヒー」はいかが

 

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光は春のものだなぁと思う日もあるけれど、今朝はまた粉雪が舞っています。冷たい風を覚悟してSui店内の空気を入れ換えて、ストーブに火を入れ、店内や玄関を整えて朝の開店準備を終えたら、まずはコーヒーを入れます。

コーヒーの香りが漂い始めると、ティールームは生き返ってくるようです。玄米コーヒーも入れて、それらを試飲しながらお客様をお待ちするというのが、毎朝の日課です。

オープン以来の看板メニュー「玄米コーヒー」は、すっかりお馴染みのものとなってきて、今ではSuiに来たらそれを飲むと決めている方も少なくありませんし、「玄米コーヒー豆乳ラ・テ」も相変わらずの人気です。

このドリップ式で抽出する玄米コーヒーは、松尾信一郎さん(鳥取県在住)が

10年もの歳月をかけて研究開発したものですが、そもそもは、40年も前に小川法慶師という方が友人の体調不良に際して、とっさのひらめきで鉄の鍋で玄米を真っ黒に煎り上げてそれを炊き出して飲ませ体調を快復させたところから、黒煎り玄米として広まっていったものだそうです。

近頃、若杉友子さんの食養生活の本が話題になっていますが、その中にも「玄米黒焼き茶」のことが出ています。病気知らずの健康生活をおくる基本の食事の中で、朝昼晩とこれを飲むことを提唱しています。

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なるべく体に良いものを提供したいという思いでメニューに加えた「玄米コーヒー」が、これからも、お客様の日々の憩いの時間を潤し、且つ体調管理にお役立ていただけるとしたら、これほどうれしいことはありません。

さあ、今朝もおいしい「玄米コーヒー」のご用意ができました。 (Y)

2013.2.19

※「玄米コーヒー」福井県の玄米作農家の作る残留農薬ゼロの玄米を松尾信一郎さんが15時間にも及ぶ焙煎をして作っています。

26 1月

翠の窓vol.113 : おいしい器『色絵染附花文四方皿』

 

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おつまみをのせて

この頃ちょっと気に入っているおつまみがあります。

とにかく速い、ということは簡単、そしておいしいのだから言うことなし!のレシピを見つけたのです。

「クリームチーズの上にかつお節ときざんだねぎをのせ、しょうゆを数滴かける」というのが全レシピ。その名も『クリームチーズの冷ややっこ風』。

ちょっと味が想像できない?・・・かもしれませんが、これがなかなか、洋と和の絶妙な取り合わせが口の中で何の違和感もなく、思わず「おいしい」と一口で虜になってしまいました。お酒の味については門外漢ですが、日本酒にビールに、白ワインや流行のハイボールとやらにも合いそうです。

器は何にしようかと考えて、四角いクリームチーズの形に合わせて、正木春蔵さんの『色絵染附花文四方皿』にのせてみました。小さめの四方皿というのは割りと珍しく、その絵柄の雰囲気からお菓子や果物の取り皿に似合って使ってきましたけど、こんな洒落たおつまみにもぴったり合ってくれました。

クリームチーズはめったに使うことはないのですが、キリのクリームチーズは、スーパーでよく見かけますし、ちょうどいい大きさの個装になっているのが便利なので、冷蔵庫の常備品になっています。

ふいのお客様にも、この速攻性と意外性がお役に立ちそうです。簡単でシンプルだからこそ、器はおろそかにしないでお洒落にお出ししてみるといいのではないかしら。

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(Y)

2013.1.26

03 1月

翠の窓Vol.112 : No Title

故郷や母がいまさば蓬餅    正岡子規

母が生きていられたならば

ヨモギの餅を作ってもらい食べたであろう。

早春のふるさとの野辺には蓬の若芽が出ていることだろう。

《望郷の思い・母恋の想い》

何となく心さやぎて いねられず

あしたは春のはじめと思へば   良寛

とりわけて心躍るということでもなく 平常心に変わりはないんだけれども、どこか心がざわめいて眠れないでいるよ。

今日から春の初めだからね。もう春だと想うだけで心が華やいでくるよ。

01 1月

翠の窓vol.111 : 年のはじめに『色絵染附角型平鉢』

 

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新年おめでとうございます。

クリスマス寒波の後一旦雪が融けてきたのに、次は大晦日から元旦にかけての寒波が来るとの予報にちょっと構えていたけれど、積もるほどの雪もなく、元旦の朝はもしかして初日の出が見られるこもとちょっと期待してしまう程の穏やかさでした。

昨年「師走」の言葉にせかされるような年末に、「今年はおせちは作らないで普段通りというのはどうかなぁ。」と言ってみたら、家人は「まあ、それでもいいんじゃない。」と気のない返事をしていたのに、いつの間にか、黒豆は今年も自分が煮ると言い出しました(アレッ、オセチツクルノ?)。

おせちと言っても、例年我が家では形ばかりのもので済ましているので大したことはないのですが、思いがけず、神奈川の友人から本場小田原の蒲鉾や伊達巻き等を送っていただいたり、金沢の知人からは加賀蓮根が届いたりして、おせち作りの弾みがついてしまいました。

形ばかりと言っても、蒲鉾や伊達巻きは必需品で大助かりです。

蓮根は筑前煮の必需品ですが、いつもはスーパーで一節を求めるだけで済ましていたのに、いただいた物は、五節くらいが連なっているもので(こんなに立派なものは初めて見ました)それが3本もあります。

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筑前煮以前に、蓮根を使ったレシピを探して1つ2つ作ってみると、これが思いがけなく美味しくて、おせちのニューフェースにもなりそうです。

31日、Suiのお客様が引けてから大急ぎで作ったおせちは、入れ物だけでも凝ってみようと思い立って、正木春蔵さんの『色絵染附角型平鉢』をお重に見立てて盛り付けてみました。

馬子にも衣装、元旦の簡単なおせちがこれまでになく豪華に見えました。

昨年も沢山の器に出会いましたが、どうやらこの『色絵染附角型平鉢』が私にとって昨年の「この一客」と言えるものになったように思えます。  (Y)

2013.1.1

09 12月

翠の窓vol.110 : 雪景色を見ながら

 

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昨日から降り続けた雪で、今日は一面真っ白な雪景色になりました。

鳥海山頂は雪雲の中、裾野はグレーに霞み、手前の吉出山は木々に被った雪が絣模様となり、それは美しい様相を見せてくれています。

今年は、カメムシの出現が少なめに感じられ、カマキリの卵も低い位置に見られたので、雪はきっと少ないだろうというのが我が家の希望的観測です。大雪だった昨年でさえ、本格的に降り始めたのはクリスマスの頃からだったと記憶しているので、今年は思いの他早く雪景色を見ることになりました。

Suiギャラリーには、末宗美香子さん(Suiの壁画を製作)の冬恒例の2013年カレンダーが届き、展示を始めました。毎年の作品を心待ちにしていてくださるファンの方がいて、既に今年も遠方からの注文も受けています。

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年々作風に変化が見られる末宗さん、「ちょっと驚くかも」とのコメントの通り新境地を開いているようです。新作のカードタイプの『everyone作品集』も置いています。お手にとってご覧ください。

昨年好評をいただいた安藤由紀子さんのクリスマスリース展は、今年も継続して13日(木)より開催いたします。私たちの身近にある自然素材を使って製作されるリースは、正に森からの贈り物。色やハーブの香りの変化を愛でながら1年中飾って楽しむことができます。しばらく続く雪の中の暮らしに豊かな彩りを添えてくれることでしょう。

毎日の雪掻きやら雪道の難儀やら地吹雪やら、雪との対峙の時がきてしまったと覚悟しつつ、「雪の無い冬なんてつまらない、雪あってこその冬」の暮らしを楽しみたいと思っています。今年もホワイトクリスマスになりそうです。 (Y)

2012・12・9

16 11月

翠の窓vol.109 : 真冬も営業 元旦も営業

 

立冬を過ぎ、一段と冷え込みを感じるようになりました.

2012 1.1 午前7時半

2012 1.1 午前7時半

 

雨模様が続いて雲に覆われていた鳥海山が数日ぶりに姿を現したとき、その頂が一段と白さを増していて本格的な冬の到来を告げているようでした。

更に雨が続いて久し振りに晴れた今朝は、山の下の方におりてきた紅葉に重なるように中腹までうっすらと雪化粧した姿が、朝日の中に浮かんでいました。

「冬は大変でしょう。雪はどの位積もりますか。」

とよく聞かれます。鳥海山を間近に見る山里なので雪に埋もれてしまうように思われている節がありますが、積雪はせいぜい60~70cm位で店の窓枠を越えることはありません。山里ではありますが、遊佐は海沿いの土地ですから。

「冬は、お店はやってないんでしょう。」

ともよく聞かれますが、いえいえちゃんと開いています。定休日以外は暮れもお正月も営業していますとお答えすると、半ばあきれ顔をされることも多いのですが。

元旦も開けています。ここから初日の出を見ていただくのも一興かなとの思いで、朝早くからストーブに火を入れてお待ちしています。それでは来てみたいという方がいて予約をお受けした年がありましたが、あいにくの曇天でその年は初日の出を見ることができませんでした。

さて、2013年の年明けはどうでしょうか。初日の出を見られることを願い、大福茶をご用意してお待ちしております。事前にご一報いただけますと助かります。

何はともあれ、まずはおだやかに年末を迎えられますよう、2012年の残り少ない日々を精進したいと思います。(Y)

2012・11・3 15時21分 

2012・11・3 15時21分

2012・11・16

31 10月

翠の窓vol.108 : 紅葉真っ盛り

 

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鳥海山の山肌が日一日と色づいて、秋の深まりを感じるこの頃です。

紅葉が進み、数日前には山全体が赤く耀いて息を呑むような光景に見とれました。山頂には何度目かの雪を頂き、青空を背景にすっくとそびえている姿は、北斎の赤富士を連想させる美しさでした。

ここ数年聞かれた鳥海山の楢枯れの言葉も今年は聞くこともなく、本来の紅葉に彩られているようで、この地に住み始めて以来、一番の見事さのように感じられます。

Suiには、このところ度々、高瀬峡の大滝に行ってきたとか、家族旅行村や祓川方面へ行ってきたというお客様が寄ってくださることがあり、紅葉狩りを楽しんでこられた様子をお聞きします。この時期たくさんの方が、鳥海山に入っているのでしょう。

今日は、会津に若くして稼業の会津塗りを継承してがんばっている方がいると聞いて、会津若松へ車を走らせました。

新庄までの最上川沿いの山々は、紅葉が始まったところという感じでしたが、米沢を抜け、福島県への県境に向かう山道では、いくつかのトンネルを抜けるに従ってそれは見事な紅葉に染まった山々を眺めることができました。

道路の両側に迫る山々は幾重にも重なって、その上から下まで全体が錦の紅葉です。様々に色づいた木々の一つ一つがこんもりとして重なっている様は、ゴブラン織りのよう、家人と二人「すごいねぇ・・・」としか声が出ず、思いがけない紅葉狩りを堪能しました。県境の大峠を越えるこのルートは初めて通る道でしたが、紅葉狩りには絶好のルートを発見したようです。

明日から11月、紅葉に彩られた鳥海山が白一色に変わっていく日も遠くないことでしょう。

(Y)

2012・10・31

Suiの奥にある舞沼の風景

Suiの奥にある舞沼の風景

17 10月

翠の窓vol.107 : 青窯の器をどうぞ

 

九谷青窯(クタニセイヨウ)に行ってきました。昨年の秋以来、ほぼ1年ぶりの訪問です。

Suiでは、オープン当初より九谷青窯の器を扱っていますが、静かな人気があって、お客様に一つ二つと求めていただきいつの間にかほぼ完売となっているという状態です。

九谷青窯では、常時10数名の若い陶芸家が、白磁あり、染付あり、色絵あり、いずれもそれぞれの目指すところに従って、日常使いの器を作っています。

13日の鳥海山

13日の鳥海山

今回は、30種類60点ほどの器を仕入れましたが、大半が白い大きめの皿や鉢になりました。白といっても、それぞれにニュアンスの異なる白ですし、彫りや釉薬の違いで個性的な器が揃っています。

白はどんなお料理も美味しそうに美しく受け止めてくれますし、手持ちの食器とも馴染みつつ、清新な風を食卓に運んでくれることでしょう。今夜のお料理を思い浮かべながら、ご覧になってください。

九谷青窯であれやこれやと楽しい器選びの時間を過ごして、帰りは、近くの小松駅まで青年に車で送ってもらいました。聞けば、今年九谷青窯に入ったばかりという若い方です。「ぼくは色絵をやりたいのです。」とのこと。いつか、正木春蔵さんのような大勢のファンにその器が持たれる陶芸家になっているかもしれません。静かな若い闘志がまぶしい青年でした。     (Y)

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2012・10・17

07 10月

翠の窓vol.106 : 『ふだんづかい、贅を楽しむ』

 

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東京の器屋さんで開かれた正木春蔵展に行ってきました。

ほぼ1年前の個展では、「組み物」などの大きな作品が並びましたが、今回は『ふだんづかい、贅を愉しむ。』という案内でしたので、小さなものかな

と思っていましたら、盃から大皿まで、それは見応えのある展示会でした。

中でも目を引いたのは、丸形や台形の土瓶です。ころんとした形も楽しく、それに描かれた色絵染付の絵柄の華やかなこと! こんな土瓶を見たことがありません。20個ほど並んだ土瓶のどれ一つとして同じ絵柄はなく、目移りして選ぶのに一苦労です。

円形や四角形の大小様々な皿、大皿、盛鉢、飯椀、湯呑、盃・・・ ほとんどが色絵や染付の一点ものの絵柄で展示されているのですから、それは見応えがあり、あれやこれやと迷いつつ2時間があっという間に経ってしまいました。

一目で正木ファンとわかる方々が次々に訪れ、次々に買い求めていく様も壮観でした。

ふだんづかいとは言え、『贅を愉しむ』とある通りの作品ばかりですが、本当に気に入った作品が一品あることで、どんなにか豊かで心満たされる食卓になることでしょう。

Suiでは、昨年より正木春蔵さんの作品を取り扱っていますが、展示当初から一目で正木さんの作品を気に入って求めてくださる方々が増えてきていますので、正木ファンの一人としてもとてもうれしい限りです。

本日より、求めてきたその作品の一部を展示いたしますので、既にご紹介している作品と併せて、心ときめく正木春蔵ワールドをごゆっくりお楽しみください。

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(Y)

2012・10・7