15 7月

翠の窓vol.75 : 夏のドリンク

10日早朝からのカァーッとした日差しは、「遊佐もこんなに暑くなるの!?」とびっくりの暑さでした。今年も猛暑の夏なのでしょうか。

Suiのティールームでは、冷たい飲み物の出番が多くなってきました。その筆頭はやはり、『アイスコーヒー』です。

「撫子人気」  サワラナデシコ

「撫子人気」  サワラナデシコ

アイスコーヒーと言えば、氷たっぷり、グラスには水滴たっ

ぷりのイメージが浮かびますが、Suiでは氷を使っていません。コーヒー豆を多めに使って入れたブレンドコーヒーを、冷蔵庫で冷やしてお出ししています。

先日、「お客さんが多くて氷が無くなったのか、アイスコーヒーがぬるかった」と言っていた方がいたと聞いて、私どもの思いが伝わっていなかったと反省しました。氷を入れると、飲んでいる途中でどんどん薄まってしまうのは必定、最後までコーヒーの味を楽しんでいただきたいので氷をあえて使っていないのです。しかし、冷蔵庫でしっかり冷やしていますので、「ぬるい」ということはありません。

『ジンジャーエール』も、夏の人気ドリンクです。有機栽培の生生姜を使用したジンジャーシロップを使っていますので、単なるジンジャー風味の飲み物とは違い、ジンジャーの香りたっぷり、ピリッとした大人の味です。

『ゆずソーダ』の名称に、涼しさと甘さを連想されてオーダーされる方も少なくありません。これも、暑さをひととき忘れさせてくれる夏ならではのドリンクでしょう。

今年は、夏のスペシャルメニューとして『抹茶のアイスラ・テ』をお出ししています。京都小山園の抹茶を使った豆乳仕立てのアイスラ・テです。抹茶の香りとくどくない甘味をお楽しみいただけます。

今夏は冷房も控え目に「夏は暑い!」と割り切って、せめて涼しいドリンクで、青田を渡る風を感じながらSuiでのひとときをお過ごしください。   (Y)

冬の準備のスタートは薪作りから 木材 届く

冬の準備のスタートは薪作りから 木材 届く

2011.7.15

07 7月

翠の窓vol.74 : 七夕の日に

 

『手仕事を繋ぐ展』は、6日目を迎えました。

工芸作家12名の個性ある作品を、400点近くご覧いただいています。

山形新聞にこの企画の紹介記事が掲載されたこともあって、この展示を目指して遠方から来てくださるお客さんも少なくありません。

今回Suiでハービー・ヤングさんの力強い作品と出会い、大皿を求めてくださったお客様には、

「考えてみたら、気に入ったよい作品が手に入って、それが被災された作家への支援になって、その上義援金を寄付することになるのだから、こんなにいいことはないわね。お友達にも勧めなくちゃ。」

と言っていただき、この企画展を催してよかったととてもうれしくなりました。

大震災から4ヶ月、被災された工芸作家も、それぞれの被災後を歩み始めていることでしょう。今夜は七夕、多くの希望と願いが叶えられますように。

引き続き、皆様のご支援をお願いいたします。

(Y)2011.7.7

21 6月

翠の窓vol.73 : メモリアルディ

 

お昼近くになって、

「はぁ・・・やっと着いた。」

と、女性二人連れのお客様が入って来られました。

「 翠 」 から 「 Sui 」 に

取り合えず遊佐駅を目指したけれどそれさえ分かりにくく、遊佐駅でSuiを訊ね

てそんなに遠くないと教えてもらったけれど、どこをどう走ったかかなり走り回って

途中で3人もの人に聞いたけど辿り着かなくて・・・とのこと。どうやら一度近くま

で来ていたようですが、「こんな山道の奥に喫茶店があるとは思えず」引き返してし

まったらしいのです。でも、

「すごい、いいところですねぇ。諦めなくてよかったぁ。」

と言っていただいてほっとしました。

Suiをオープンして2年余、口コミで伝えていただいてきた上に、5月に『クレ

ードル』に掲載されたお陰で、全く新しいお客様も訪ねてくださるようになり、この

ところ店の場所が分かりにくいという話が再燃してきています。ご迷惑をおかけして

ごめんなさい。

地域の皆様には、Suiの場所を訊ねられて親切に教えてくださったり、中には車

で先導してくださる方もいらっしゃるとのこと、皆様のご親切にも感謝しております。

この日、前述の方々の後に、やはり『クレードル』を見たのでと来店された女性が窓からの景色にいたく感嘆してくださいましたが、この方がSuiのオープン以来延べ10000人目のお客様となりました。

10000人てどんな数かなぁとぴんとこない感じもありますが、少なくとも10000回の「いらっしゃいませ」と「ありがとうございました」を言うことができたのだと考えると、ちょっと感慨深いものがあります。

「こんな山道の奥に喫茶店があるとは思えない」ようなところにあるSuiに、本当に大勢の方々が足を運んでくださったものです。ありがとうございました。          (Y)

2011.6.21

田んぼに鳥海山が映らなくなるとやがて蛍が飛び始める

20 6月

翠の窓vol.72 : 蛍の季節に

 

vol72-1

夕食後、もうそろそろいい時間と庭に出て裏に回った途端、「いるいる!」と思わず声を上げてしまいました。ホタルです、私とって今年の初ホタル。

2,3日前から、家人が「1匹いた」「5匹見かけた」と言っていたので、少し蒸し暑さの感じられる今夜はきっといいチャンスと期待したとおり、裏の杉林の中に2つ3つと揺れている小さな光を発見。沼の上や沼の横の流れの上にも、1匹2匹・・・少し先の方にもゆらゆらしている光がいくつも見えます。

農道を更に進んでいくと、土門さんの田んぼの横の流れに沿って、こちらにも3匹4匹・・・ 少し離れた湿地の方を見ると、そちらにもいくつもの光が点滅しています。

空には満天の星、ホタルと同じ位の光なので、ホタルが高く飛ぶと一瞬星と見分けがつかなくなります。

今年はいつもより気温の上がる日が少なく1週間位遅い気がしますが、今年も大丈夫。今夜は50匹ほど数えましたが、これからは数を増やしつつ毎夜飛んでくれることでしょう。ホタルは、蒸し暑い夜によく飛び、肌寒いようなときは、草むらに潜んでいます。ある年は、好条件だったのでしょう、何十匹ものホタルが一斉に舞い上がる幻想的な光景に出会ったことがあります。

この地に住み始めた5年程前は、誰もホタルを見にくるということもなく、私たち二人だけが夜毎独り占めしたように見ていましたが、Suiをオープンして、お客様にホタルの出ることをお伝えしてきたので、ここ2年は、何組かのお客様が見に来てくれるようになりました。今年は、お客様の方から既に何組か見物したいとの申し出があります。事前に言っていただきましたら、ティー草野心平ルームもご利用いただけます。

『動く光はほたるさん 動かないのはお星さん』

『動く光はほたるさん 動かないのはお星さん』

農家の方や家人が農道を草刈りをしているので、夜でも足元は安心ですが、農道に車を乗り入れるのは避けてください。轍をおおう草の中にホタルが潜んでいることもありますし、何より車のライトはホタル見物には興ざめです。Suiの駐車場をお使いくださって構いません。

(Y)  2011・6・20

11 6月

翠の窓vol.70 : 石田典子水彩画展 Ⅲ

 

「こんにちは~」

と、聞き覚えのある柔らかな声と共に突然姿を見せた石田典子さんにびっくり!

近いうちに訪ねるとの手紙を数日前に読んだばかりでしたが、6月の個展開催中のことと思いこんでいたのです。

「6月ではだめなの。5月のこの空気を吸いたかったし、この景色を見たかったの。」とのこと。確かに、初夏に向かうこの緑の空気と6月になってのそれは別物で、山かげの紺色と木々の若々しい緑色のコントラストは、この時期だけの絶妙な色合いを見せています。

「ここは、ほんとうに美しい・・・」

と、5月の山と田園を堪能してくださったようです。

つい先だって3キロメートルほど先で熊が出たことが話題になると、

「熊の出る喫茶店?! そこで個展をするなんてねぇ。」

と言うので、大笑いになりました。

今日からの『石田典子水彩画展Ⅲ』では、上野の森美術館展出展作品である「山五十川にて」「立谷沢にて」や、鶴岡在住の3年間に出展した白甕社美術展の「咲いた咲いた」「浜中海岸」「ミラベラ」などの意欲作を中心に展示しています。

「時計台」「オリーブの丘」など、この季節にぴったりの爽やかな作品もご覧いただけます。

緑濃い遊佐の自然の中で、今年も石田典子さんの世界をごゆっくりお楽しみください。    (Y)

2011.6.1

10 6月

翠の窓vol.71 : グラス一つの贈り物

 

「これをプレゼント用に包んでください。」

と、若い男性の方が手にされたのは『ゆらぎロックグラス』です。若い男性からの贈り物ということでブラウンの袋に赤いリボンを結んだプレゼント包装にしてお渡ししました。

プレゼントのお相手はわかりませんけれど、赤いリボンを解いて白い紙の中から現れたグラスを目にしたとき、どんな顔をされたことでしょう。

『ゆらぎロックグラス』は、やや薄手のガラスの表面に細かい凸凹が浮かんでいて、それが水面に光があたって揺らいでいるような涼やかなニュアンスを醸し出しています。

夏に向かうこの季節、表情のあるグラス一つ、本当にお洒落な贈り物だなと贈り主のお客様のセンスに心の中で拍手していました。こんな贈り物を手渡されたらどんなにかうれしいでしょうね。

このグラスは、西山芳浩さんという若い作家が制作しています。Suiには、他に6種類のグラスを揃えていますが、それぞれに表情のある魅力的なデザインです。

今夜、我が家では、新しく入荷したグラスの使い心地を試す会と称して、小さなグラスと六面徳利を並べて、冷酒をいただいてみました。

『六面徳利』はゆるやかな六面の凸凹がやさしいふくらみを形作っていて、その透明感は冷酒にぴったりです。『八角グラス(小)』は、小さいながらずっしりと手応えのある重みが手に馴染み、ずっと持っていたい気持ちにさせられます。『しのぎグラス』も小さいわりに、底に意外な重みがあってとても心地よく感じられます。それに、明かりが入るとしのぎの部分がキラキラと光ってそれはそれは綺麗です。

冷酒を入れたら? それはもう・・・「このグラスは気持ちがいいねぇ」と言いつつ、美味しい時間を過ごしました。

間もなく「父の日」、グラス一つのプレゼントはいかがでしょうか。お洒落な贈り物になること間違いなし、お父様の笑顔が浮かんできます。  (Y)

2011.6.10

25 5月

翠の窓vol.69 : 田園はSuiカラー

2011

2年前Suiのオープンを控え、ショップカードのデザインを考えていたとき、デザイナーから提案された数種の色から、私たちは躊躇なくきみどり色を選びました。スイ(翠)という店名の色合いと響きにマッチするきれいな色だと思ったからです。

鳥海山と田園を日々眺めていると、このカラーがこの場所にこの店にピッタリのものだったと、その選択の妙に感じ入っています。

初夏に向かいつつある今まさに、Suiの周辺はこのSuiカラーに溢れています。

植えられたばかりの早苗

畦道の草

木々の若芽

鳥海山を這い登っている緑の帯・・・ どちらを向いてもSuiカラー!

夕方6時を過ぎて、花農家のご夫妻が仕事が一段落して、Suiの辺りはきっときれいだろうと車を走らせて来てくれました。6時を過ぎてもまだ十分に明るく、鳥海山はくっきりとした姿を見せてくれています。ウッドデッキで、水田を渡ってくる風を感じながら緑を堪能して、「来てよかったぁ」と言って帰られました。

お天気のよい日に恵まれ、5月は大勢のお客様に来ていただいていますが、この春から初夏にかけての田園と山の美しさは何物にも変えがたく、更に一人でも多くの方々にこの景色を目にしていただきたいと願っています。

その輝くような美しさはこの時期だけのもの、緑の変化は本当に早く、日に日に濃い緑色に変わっていきます。その変化は、昨日から今日へ今日から明日へ、その境目を見分けることはできませんが、確実に夏の緑へと移っていく自然の営みです。

(Y)

2011.5.25

18 5月

翠の窓vol.68 : いつでも一番

 

「ここの風景は、いつが一番いいですか。」と、今日もお客様に聞かれました。その都度「う~ん・・・」と躊躇するのですが、というのも、いつでも素晴らしいからです。でも、あえて言えば、ちょうど今頃。

「初春から緑が萌え出す頃は、それはそれはきれいですよ。」

とお伝えしています。

木々の若芽が出始め、冬の間は色を失っていた林や山がぼんやりと霞がかかったようにけぶってきて、淡いきみどり色の木々の中に山桜などの薄いピンクや白い色が点在するようになると、山はいよいよふんわりとした『春紅葉』に静かに静かにわき立つようになります。

ここ数日ほんのわずかの間に緑色が勝ってきて、数日前からは、緑色の帯が鳥海山を這い登っていく様が見てとれます。空気も澄んでいるのか、昨日今日は、鳥海山がことのほかくっきりと見えゾクッとするほどに感じられるのは私だけでしょうか。

気が付けば今夜はちょうど満月のようです。黄色い大きな月が昇りました。煌々とした月明かりに、鳥海山が浮かびあがり、11時を回っているのに田植えをしたばかりの田に逆さ鳥海が映っているのも見えます。田んぼの遥か先の部落の明かりが4つ5つ、それも田に映りゆらゆらしている様は幻想的で、時の経つのを忘れて見入ってしまいます。

四季折々それぞれの良さ美しさは書ききれるものではなく、この時が一番とは決めがたいのですが、夜明けから夜更けまでの一日の中でも、刻々と変わりつつ思いがけない美しさを発見することが数知れずあります。

自然の営みに脱帽の毎日、豊かな自然の中で生かされている幸せに感謝する日々です。  (Y)

2011.5.18

09 5月

翠の窓vol.67 : 水 田

 

「えっ、これって川なの!?」

初めて来店し、窓の外を見たお客様が頓狂な声を上げました。

Suiの目の前の土門さんの田には、今年もいち早く水が張られ、水田がよみがえりました。風で一定方向にさざ波が立つと、本当に川の流れのようです。そんな時、窓のそばに立ち水面を眺めると、小船に乗って揺れているような錯覚に陥ります。

「これが田んぼになるの?」

と、これまたエッ?と思うようなことを言われる方もこれまで一人二人ではなく、思わず苦笑してしまうこともあります。庄内平野を見慣れていることでしょうに、店の中から間近に見る情景が、一瞬、春の田植え前の様子だと結びつかないのでしょう。

畦は日毎に緑色を増して、いよいよ緑の饗宴の季節の始まりです。

近頃は、店内に入る前に付近を散策したり、帰りに散策している方を多く見かけるようになりました。それは、ここに住んでから5年、裏手の小川に沿った道や、農道、沼の土手など、目が届く範囲を草刈りしてきた家人が密かに望んできた光景なのです。

5月になって、地域情報誌「クレードル」を片手に初めて来店される方も増えてきました。この日本の原風景とも言うべき美しい風景を、より多くの方々に知っていただき、見ていただけるのは、私どもの喜びです。

間もなく、土門さんの田では田植えが始まることでしょう。Suiでお茶の時間を過ごしながら、田おこしから田植え、稲の成長、黄金色の稲穂の波、刈り取りなど、田んぼの一年の変容を見せていただけるなんて、なんて贅沢なことでしょう。

鳥海山麓の四季折々の美しい風景を、今年も存分に堪能していただきたいものです。

早朝の山里は大気がピーンと張り詰めているように感じます 

早朝の山里は大気がピーンと張り詰めているように感じます

Suiは、今日にも、開店以来延べ9000人目の

お客様をお迎えすることになりそうです。   (Y)

2011.5.9

06 5月

翠の窓vol.66 : カーネーション

 

「これは、被災地の宮城県名取市から届いたカーネーションで・・・」

と言いかけると、どの方も少しはっとされる表情でカーネーションを見つめなおされるようです。

名取市では、被害を免れたカーネーションが次々に育って出荷時期を迎えても、それを切り取る手が足りなかったり、流通がと滞ったりして困っているということですが、それを直接分けていただくことができましたので、200本ほどのカーネーションをお店に飾りながら、お客様に一本ずつお持ち帰りいただきました。

「名取のカーネーション栽培ニュースをテレビで見ました。泥水をかぶって大きな被害を被っているそうですね。」

被災地:名取市で栽培されているカーネーション「大事に飾って応援します。」と、皆さん大事に持って帰ってくださいますので、お家に帰られたらご家族でひとしきり名取市の話題となって、それぞれに名取に思いを馳せていただいていることでしょう。

カーネーションといえば母の日、その母の日が間近になりましたが、被災地では、大切が大切なお母さんを亡くした方が大勢いらっしゃることを思うと、切なさがこみあげて涙が止まりません。

先日、石巻で被災されたお母さんにカーネーションを贈るつもりでいたというお客様が、是非この名取のカーネーションを贈ることにしたいということで、連絡先を教えました。

今日も名取から100本のカーネーションが届きます。母の日まで、皆さんにお渡しいたします。それぞれに大切なお母さんに思いを届ける幸せな母の日をお過ごしください。

(Y)   2011.5.6