翠の窓vol.63 : 山里の春は
久し振りのまぶしい朝日に誘われて、散歩に出ました。これまた久し振りに、朝の雲一つない、今日一日の晴天が約束されているようです。
まぶしい朝日と裏腹に頬に当たる風は思いのほか冷たく、気がつけば畦の斜面が真っ白に霜でおおわれ、田の水に氷が張っているところもあります。
にもかかわらず、田の中から「ピチピチピチピチ・・・」とにぎやかな鳴き声があちこちに聞こえてきます。ヒバリでしょうか。
遠くに「クワッ クワッ クワッ・・・」と聞こえてくるのは、白鳥の鳴き声です。北帰行だなと声のする方に目を凝らしてみますが姿は見えず、鳴き声だけが北の方へ移動していきます。一時間ほど歩いている途中に、7~8組の編隊の声を聞きましたが、薄水色の空を背景に飛んでいるようで、どんなに目を凝らしても姿をとらえられませんでした。
北帰行が見られる頃になると、Suiの目の前の田にも白鳥が餌をついばみにやってきます。数日前には、百羽を超える白鳥が道路を挟んで両側の田んぼに降り立ち、終日餌をついばんでいました。ここに住んで5年になりますが、この場所にこんなにたくさんの白鳥が降り立ったのを見るのは初めてのことで、一日中飽かずその姿を眺めていました。
雪解けの田圃、真っ白な雪を頂いた鳥海山、まぶしい朝日、小鳥の鳴き声、のんびり餌をついばむ白鳥・・・ 庄内の初春の何とものどかな風物詩です。今年の春は、どなたもが、いつにも増してこの豊かな自然が損なわれることのないことを願っていることと思います。
被災地となった海にも山にも川にも田にも畑にも、美しい自然が広がっていたことでしょう。再びそれらを誇りとし愛して暮らせる地となりますよう、一日も早い復旧を願うばかりです。 (Y)
2011.4.6