翠の窓vol.115 : 春がきている
風が変わった・・・と感じたのは、幾日前のことだったでしょうか。
厳しい冷たさだけではなく、かすかにふんわりと暖かなものが混じっているように感じられたあの日から、春が足早にやってきたようです。
早朝、家人に起こされて外に出ると、もう身を刺すような冷たさはないけれど、残り雪がかろうじて「かた雪」になっていました。この冬最後の「かた雪」を歩こうというわけです。
鳥海山の頂上付近は薄いグレーの雲がおおいかぶさっていますが、ひと所ぽっかりと雲の切れ間があって、そこに朝日のオレンジ色の光がもれて日の出の近さを感じさせます。オレンジ色の光は、雲の間に間に見る見る空高く広がっていきました。
かた雪の田んぼを横切っていくと、小さな足跡が幾つもどこかを目指して進んでいっている様子が見られました。ウサギかタヌキかイタチのようなものでしょうか、きっと夜のうちにつけられた足跡なのでしょう。そんな小動物の行き交いを見ることができたら、どんなに面白いことかと思います。
田んぼ脇の小川は雪解け水を含んだ澄んだ水を運び、淵の雪はいち早く解けて、枯れ葉色の地面の中に若草色のばっけが幾つも顔を出しています。まだ小さくころんとしたばっけを3つポケットに入れて、確かな春の足取りにほっとする気分でかた雪散歩からもどりました。朝ご飯の味噌汁の仕上げに、ばっけをかるく刻んで落とすと、ぱっと香りが立ちました。
春の香りです。
いつの間にか鳥海山の雲が遠のいて青空が広がり、まぶしい朝日に鳥海山の雪も田んぼの残雪もきらきら輝いています。今日は、久し振りの晴天になりそうです。 (Y)
2013.3.15