翠の窓vol.117 : 母の日に
枕元に差し込む朝日の何とまぶしいことでしょう。
鳥海山は朝もやに霞み、若草におおわれ始めた畦道にはたっぷりの朝露が降りて、今日一日の晴天が約束されているようです。
昨日「器を見せてください。」と来店されたお客様がいらっしゃいました。幸い先客はお一人だけの時でしたので、ゆっくり器を見ていただくことができました。
皿、カップ、グラス・・・とあれこれ手にとってじっくり吟味されているようでしたが、
「これにします。プレゼント用にしてください。」
と差し出されたのは、市中屋さんの朱塗りの角皿です。これは素敵な品を選ばれたと思っていると、
「大分予算オーバーだけど、自分用に欲しかったものはこの次にすることにして。」
と、気に入ったものを選んで満足されているよう、どうやら母の日のお祝いのプレゼントのようです。
この角皿は私にとって思い出深い物、数十年前に初めて自分で買った塗り物でした。塗り物と言えば類型通りの物が多い中、シンプルで他には見ないモダンなデザインに一目ぼれしてエイッと勢いで求め、塗り物に魅せられるようになったきっかけになった一品です。
数年前までは、自分が器店を始めることも、まして市中屋さんの塗り物を扱えるようになることなど思いもしていなかったのですから、今あることが夢のようです。
さて、母の日に、娘さんからのお祝いの市中屋さんの朱塗り角皿を手にとったお母様はどんな顔をされるのかしら・・・。
私の夢のおすそ分けができるようでうれしいです。 (Y)
2013.4.15