翠の窓vol.11 : うちわの風
うちわの風
デパートのショーウィンドウに、透かし模様も艶やかな大振りのうちわを見つけました。とてもおしゃれ、欲しいなと思って値段を見ると、なんと0が4つも!
7月、ちょっと蒸し暑いなぁと感じるようになると、幾つか持ち合わせているうちわを出しておきますが、うちわを見ると決まって思い出すことがあります。
小さい頃、蒸し暑い夜の寝入りばなに、母がうちわで涼しい風を送ってくれたこと。左右に行ったり来たりする涼しい風を感じているうちにすうっと眠りにつくことができました。あのやさしい風の感触と気持ちの良さがよみがえってくるのです。
あの頃は、エアコンは元より扇風機もまだ家になかった時代、うちわが必需品でした。
母が使っていたうちわは、町のお店の宣伝が入ったもらいものだったように思います。万単位のおしゃれなうちわを使ってみても、母が扇いでくれたあの風に勝る風は味わえないでしょう。
蒸し暑い夜、その度に、母のあのやさしく涼しい風があったらなぁと思いながら自分で自分に風を送ってみます。
遠く遠くなつかしい思い出です。
(Y)
2009.8.13